→つづき
年越しもクオ田とケバ子は一緒に過ごしてるのかなぁなんて思いながら切なく年を越した。
初夢はクオ田と色々な場所にデートに行く夢だった。
夢から覚めると現実という悪夢が待ち構えている。
毎朝起きた瞬間絶望に襲われて心臓が冷たくなった。
年明け、もう一つのバイト先で働いているとケバ子が来店した。
もう一つのバイト先とはTSUTAYAだった。
筆者が勤めているのを知っていながらクオ田と観るDVDを毎度借りに来ているようで良い度胸だと思った。
こっちのバイト先に居る時くらい2人の事は忘れたい。
来て欲しくないので「この前DVD返却処理してたら丁度ケバ子が借りたやつだったよ笑」と、ココで借りると何を借りてるのか筆者に見られるという事を植え付けた。
するとクオ田に相談したのか「アイツ職権濫用して俺らの借りたDVD調べてやがる!これチクったらクビにできるよな!??笑」と話を誇張してバイト先で筆者の悪口を言っていたらしい。
ケバ子が借りたDVDを返却に来る際も、レジに筆者の姿が見えるとレジ横の返却ボックスに遠くから投げ入れるクオ田に幻滅。
それでもどうでもいいとは思えないのか、2人がまだ続いている事や筆者に酷い扱いをしてくる事に深く傷付いた。こいつが存在している限り、平和は訪れないのだろうか。
ケバ子のホームである歌子を含めた同じセクションの元メンバーの集まりには嫌がらせのように毎度参加した。
筆者が居るからなのかケバ子は一切参加しなくなった。
ケバ子が居ないのを良い事にひたすらクオ田の酷い話をした。ここでケバ子の悪口を言わないのがミソだ。
こんな最低な男と未だに付き合ってるケバ子もどうなの?と皆に自ら思ってもらえるように、あくまでケバ子を陥れようとしてる訳ではなく自分の辛い話として共有したので心強い仲間になってくれた。
ケバ子が堂々とクオ田と付き合い辛くする為の作戦だ。そして復讐でもある。
バイト先では今まで苦手だった女帝として君臨するギャルにも話を聞いてもらった。
ただ愚痴るのでは味方になってくれるか怪しい。ヤンキー気質で姉御肌なので、情けない自分を演じて頼る形で相談する事で「クオ田調子乗ってるけどあんなん余裕でシメるっしょ?」と、頼もしい味方にする事に成功にした。
「てかケバ子のどこがいんだろね?ブスじゃんね?どう見ても凛々華のが可愛いじゃんね?」と遠慮なくズバズバ言う性格だからこそ、誰かに言って欲しかった言葉を初めて言ってもらえた気がして、ここ数ヶ月で失った自己肯定感が少し戻ってきた。
早くクオ田から遠ざかった方が精神衛生上良いのは解ってるけれど、せめてバイト先の全員にクオ田の悪事をバラして、クオ田が今後何を言っても信用されないようにせねば辞められない。
あまり影響力の無さそうな地味キャラにも1人ずつ話をして着実に味方を増やしていった。
目的を遂行する事に必死で、女子に免疫の無さそうな非モテ男子にも「ちょっと2人で話したい事があるんだけど」と呼び出していたせいで内容を聞いて落胆する男達も多々居たのは申し訳なかった←
しかしおかげでクオ田が警戒していない地味目男子達がスパイとなって、筆者がバイト先に居ない間も何を言っていたのか報告してくれるようになり心強かった。
確実に領地を広げていった。
心の中で嫌いながらもケバ子とは定期的にゴハンに行って近況報告をさせていた。
ケバ子と仲良くする事がクオ田への圧力になるとも思っていた。
別れようと思っているという意思もやっと聞けて、心が少し穏やかになった。
筆者の一番の願いは二人が別れる事だったのだと思う。
しかしケバ子からメールの返信がないとまたクオ田に丸め込まれたのかなとモヤモヤしたり、ケバ子からのメールに日々気持ちを左右されていた。
最近少ないケバ子のシフトがクオ田のシフトに合わせて入れている事に気付きショックを受けたりもした。
もうクオ田を負かすのは無理かなぁと諦めかけていた時、1月の終わりにオープニングスタッフ飲み会を開催すると聞き、一か八か最後の爆弾を仕掛けて華麗に散ろうと思った。
二人を別れさせられてないし、クオ田を孤立にもさせられてないけど、スタッフのほとんどにクオ田の悪い印象を植え付ける事ができた。
残りはクオ田と連んでいるオープニングスタッフのメガネとノッポだ。
2人はクオ田と距離が近すぎてなかなかコンタクトが取れなかった。
ノッポはクオ田に完全に洗脳されている。
メガネは腹黒いが純粋なノッポだけでも真実を伝えたかった。
大学4年組は皆2月か3月にバイトを卒業する。
筆者は就職が決まっていないがこのタイミングに合わせて一緒に辞める事を決めた。
昨年末、クオ田のせいで逃げるように辞める事だけは嫌だった。
あくまで大学卒業のタイミングという事で、デザインスクールが本格的に始まる3月前に辞める事にした。
毎度ちゃんとゴハンを食べてるか確認してくれるイケメン社員に「辞めようと思う」と伝えると「…それが良いかもな」と言われた。
社員達は何も言わないが事情は全て解っている様子。
「…最後に復讐してやりたいと思ってる」と呟くと「…レベルが違いすぎる。やめとけ」と言われた。それは筆者だから太刀打ちできないという事ではなく、イケメン社員からしても手強い相手だという事だった。
確かにな。
でもこのままじゃまだ終われないのだ。
辞める最後のその日まで
後悔しないように
自分が納得して終えれるように
最善を尽くそうと決めた。
→つづく