→つづき
クオ田から部屋着を返してもらっている現場を不思子に見られた事はチャンスと思い、クオ田の部屋に自分の部屋着を置いていた事を堂々と答えた。
訳が解らずポカンとする不思子。
居づらくなったクオ田は何も言わずその場を立ち去った。
不思子も筆者と2人きりは気まずいので黙って更衣室に入っていった。
このチャンス逃してたまるか。
不思子を追って更衣室に入った。
目的はクオタ教の幹部信者だった不思子をこっちの仲間にしてクオ田をギャフンと言わせる事だ。
これだけ今まで派手に喧嘩をしてきたので、今更真実を述べて誤解が解けたところで不思子のプライド的に簡単に仲直りはしづらいだろう。
というかまず最初から話を聞いてもらえない可能性大。
肝心なのは出だしで一気に惹きつける事、
自分の名誉の為に誤解を解くのではなく、ただ不思子と仲直りしたい気持ちをぶつける事。
「不思子…!ごめん…ごめんねっ…私、最初から不思子の事信じれば良かった…!!!涙」
舞台のクライマックスかのような筆者の芝居に不思子は驚いて振り返った。
筆者から謝るのは不本意だが、目的達成の為に小さなプライドは捨てた。
「私達、クオ田に騙されてたの!!!!お互いに悪いように吹き込まれていたの!!!!私、クオ田と付き合ってたから信じちゃって…あぁ馬鹿だった!!!不思子の事信じれば良かった…!!!!!」
不思子は黙って話を聞いてくれたが、妙に反応が薄い。
先程のクオ田が居た時からなんか様子がおかしく、表情や話し方がいつもと違った。
よく見ると泣き腫らした後だったようだ。
普段から不思子は自由人でバイト中も持ち場を離れてフラフラしていた。そんな事普通は許されないのだが、不思子の特殊なキャラや仕事ができる事もあり、今までは許容されていた。
それを今回初めて仲の良い社員に怒られて大喧嘩してバイトを抜け出してきたらしい。
第三者として聞いていても普通に不思子が悪いと思った。笑
ここ最近は筆者が何を言っても話すら聞いてくれなかったが、泣いた後のポヤポヤした状態だったので口を挟まずに話を聞いてもらう事ができた。
更衣室という密室で逃げられない場所だったのも功を奏した。
それから直前にクオ田から部屋着を返してもらっているところを見られた事が本当に付き合っていた話に真実味を持たせた。
今更不思子にとって真実が解ったところでどうでも良かったのだと思うが、社員に見放されて弱っているタイミングだったのもあり、筆者からの熱烈アプローチは響いたようだ。
運命を動かすのはタイミングが全てだなと思った。
「夜に姉子とツンさんと飲むんだけど来ない?後でゆっくり話そ」と言われ、不思子とは一旦解散した。
ツンさんとは異動してしまった身分の高い社員で筆者に目をかけてくれている人だ。
↓この記事参照
夢みたいだ。
ずっとバイトに行くのがしんどかったけど諦めなくて良かった。
早く不思子と結託してるところをクオ田に見せつけてやりたい。
今まで筆者が笑い者にされていたようにクオ田の事を不思子と一緒に大声で悪口言って笑ってやりたい。
これからのバイトの日々が楽しみで仕方なかった。
姉子に不思子と仲直りできた事をメールをすると驚いていた。
誰もがもう修復は不可能だと思う程に破綻していたのだ。
夜に集合すると、ここ数ヶ月の喧嘩が夢だったかのように不思子との関係は戻っていて、不思議な感覚だった。
「本当に仲直りしたんだねぇ…!」と姉子も少し引いている。
あれだけ酷い事を言われていたのに謝られる事もなく何も無かったかのように接してくる不思子に感覚の違いを感じたが、クオ田を倒す為に仲良くなる事は必須なのだ。
流れでこうなったが、不思子は筆者と不仲のままでも仲直りしてもどっちでも良かったのだと思う。
それよりも今日喧嘩した社員との事で頭がいっぱいでツンさんにひたすら愚痴っている。
「あっちから謝ってくるまで絶対許さないから!!!」と言っているが、もちろんどう考えても不思子が悪いので喧嘩した社員から謝ってくる事はない。
そしてまさかの、この日が勤務中にバックれた不思子の最終出勤日になるのだった。
やっと、やっと、不思子を仲間にできたのに…
これからだったのに…
一度もクオ田にやり返す事もできず
なんていうタイミングの悪さ。。
散々不思子に苦しめられてた日々に、今回の実質クビのような形で急遽居なくなるのだったらそんなに喜ばしい事はないのに、
何故今なんだ…!!!
敵陣の重要人物をようやく仲間にできて勝利が見えた途端その人物が殺されてしまうってサスペンスではお決まりだけど、まさか現実でこんな展開になるとは…。
→つづく